前回の日記でCGRP受容体拮抗薬 とかいきなり書いてしまったので補足です。
CGRPはカルシトニン遺伝子関連ペプチド(ペプチドはアミノ酸二個以上が結合したもの)の略称で、極端な言い方をすれば頭痛における痛覚と血管拡張に関連した物質です。
つまり、このペプチドの受容体を妨害できれば、頭痛の発生メカニズムそのものに抑制的な働きが期待できるのでは、と考えられて作られたのがCGRP受容体拮抗薬のわけです。
このCGRP受容体拮抗薬については、日本イーライリリーが2018年の10月にプレスリリースをだしていました。
https://news.lilly.co.jp/down2.php?attach_id=552&category=12&page=1&access_id=1844
臨床試験の結果は上々のようなので、非常に期待ができますが、お値段も非常に心配な薬です。ヒトゲノムの解明や今までの研究成果によって、これからの医療はこういった病気に関連した遺伝子や神経をターゲットにして抑制したり、破壊したりあるいは活性化させたりする、そんな流れになっていくのでしょう。
実際、アスリートの世界でも運動後に微弱な電気刺激を与えて疲労回復をつかさどる神経を活性化させる、なんていう機器も出てきています。(マイクロカレントで検索するといろいろ見つかります)
首筋から迷走神経を電気刺激するgammaCoreという機器も群発頭痛に対して一定の効果があるようなので、認可されるとありがたいですね。
http://www.jhsnet.org/zutu_topics_53.html
医薬品が実際に使われるには色々と安全性を確かめないといけないのは当然のことで、世界は確実に良くなってるし進歩もしていますが、成果を享受するのに忍耐が必要なのも変わってはいません。
副作用や、長期的に使用したら神経が回復不能なダメージを受けたりしないか、など長期的な影響はこれから分かっていくのでしょうが、外部からの刺激で肉体を活性化させるなんていうとSFにおけるブーステッドマンみたいな感じですげえ時代になったなぁ、と思います。
我々が意識と思っているものも、哲学的な意味を取っ払ってしまうと神経ネットワークおける電気信号のやり取りに集約されてしまうので、究極的な意味では意識のダウンロード、バックアップが可能になる時代が来るのでしょう。
そうなると人間の定義はどこへ行くのか。
希少性のある神経パターンに価値が見いだされていくのか。
意識や存在の揺らぎを超克できるのか。
ゴーギャンの絵のような命題が突き付けられる日も遠くはないのかも。
「我々はどこから来たのか 我々は何者か 我々はどこへ行くのか」