何とはなしに手に取った
エーリッヒ・フロムの「愛するということ」を読了。
興味深い内容だった。
「どうやったら愛されるか」ではなく
「どう愛するか」こそが重要、とフロムは説くわけだが
その理論の展開の仕方は大変面白かった。
与えることは与えられることに等しく
一人を愛することは、人類全てを愛することに等しい。
そう言う考え方は好きである。
つまり、「汝のごとく、汝の隣人を愛せ」ということだ。
無論、私は仏教徒であるからキリスト教的な価値観には多少の異論はあるのだけれども。
フロイト派の心理学をベース(というかもっぱら批判に近いが)に理論展開をしているのは珍しい気がする。
とくにこの手の『愛』について語ったものは。
フロムの指摘する「現代の愛は実は市場原理に基づいたものである」という点は大いに同意するところであるし、興味に駆られていくつか読んだ恋愛マニュアル的なものの内容を思い返してみても、確かにそう言った原理は見え隠れする。
もちろん、私のような愚直な人間には、あの手の恋愛マニュアルのような気の利いたことは出来ない。
自分の出来ることを、出来る範囲で行う以外にはない。
生来の気鬱で揺れが出るのはもうどうしようもないのだとしても、しかしこのやり方以外に進む道はあるはずもなく。
いつか掴めるものもあるだろう。
何事も易々手に入るものではなく、そこには修練と忍耐が在るのみである。
「自分を愛し、同時に他の全ての人を等しく愛する人は、偉大で、正しい」
というマイスター・エックハルトの言葉が載っているのだが、これもなかなか含蓄のある言葉だと思う。
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