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悪の定義

 図書館の新刊で「ヒトラーの謎」が手に入ったので読んでみたが、これがなかなか面白い。
 面白い、と書くと不謹慎に思われるかもしれないが、別にヒトラーのやったことを正当化するわけでも何でもなく、「人間・ヒトラー」としてどこまで考察できるのか、という点に踏み込んでいる本は初めて読んだ。
 ヒトラーというと、狂的な独裁者であり、ユダヤ人を虐殺し、ヨーロッパを恐怖のどん底にたたき込んだわけだが、そうしたイメージだけでなく、実際の過程に踏み込んでいるところや、その生い立ちなど実に興味深い内容である。
 元来、純粋な悪などと言うものは存在するはずもなく、どんな人間であってもそこに至る過程があるわけで、単純に「狂った独裁者」だけで片づけるのはナンセンスであろう。
 もし、何かの原因でヒトラーが芸術で身を立てていたなら、我々は狂人の代名詞ではなく偉大な建築家としてヒトラーを見ることとなったのかもしれない。そういう可能性はある。
 ただし、それが正しい過程なのかどうかは誰にも判らない。
 集団や権威による残酷性の発露というのはアイヒマン実験、あるいはミルグラムの実験と呼ばれているものでも明らかにされている。
 ドイツをあのような熱狂に駆り立てたものは何であったのか、ナチスは何故生まれたのか、ハリウッドがドイツを悪の代名詞のように用いていたのは何故か、そういう部分にも光を当てていかなければ、真に平和について考えることは出来まい。
 ヒトラーを人間として扱うことはタブー視されてきたが、ようやく研究の対象として見られるようになってきた感がある。
 「ヒトラー最後の12日間」も是非見に行きたかったが、近くでやってないんだよなぁ。
 非常に残念だ。
 物事には善悪は存在するが、真実そのものは善でも悪でもない。
 世界はモノトーンで分けられるはずもなく、そのような力や動きに対して、人は敏感であるべきように思う。
 選挙もまた然り。
 人は単純な理念、単純な勝利を望むが、事実はそんな単純ではない。
 山崎元氏の「三手先を読んで投票しろ」はまさにその通りであるように思う。
 複数の問題点の方針が、一つの投票で決まってしまう、という矛盾はあるにせよ。
 ともあれ、どんな理由であっても、投票した人間だけが国に対して正当に文句を言う権利がある、と私は思っているので9/11はしっかり選挙へいく。
 とりあえず、郵政民営化もいいが年金と医療費を何とかしてくれい。 

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