自分で文章を書き、 趣味を読書と公言し、本に関わる仕事をしているにもかかわらず、本を読むのが苦手だったりします。
というのも、短期的な記憶が良く抜け落ちるうえ、集中すればするほど欠落しやすくなるので、結果的に中身を覚えようとすると同じ本を何度も何度も読む羽目になるためです。
色々な本を読み、楽しむのですが、読み終わると記憶から多くが抜け落ちる。正直な話、漫画の方が内容を覚えていやすい。
そんな困った体質なので、自然と読む本は少なめです。
一方で、何度も読むのに耐えうる、琴線に触れるような本があり、そういったものは手放さずにずっと置いて、ことあるごとに読み返してしまいます。
たとえば、「いたいけな主人 どろぼうの名人サイドストーリー」(小学館・ガガガ文庫)。
10年ほど前に出版された百合小説ですが、今を持ってなお恐ろしい破壊力をもつ物語です。
形式としては、仕える国王への想いが淡々と、膨大な質量を伴って主人公の一人称で語られていきます。
その揺るぎない想いは純粋さと言うより透き通った狂気を秘めており、甘い語り口でありながら、読み進むにつれて浸食するように重い何かを孕んでいく恐ろしさ。
世界観的には千葉が独立していたり、政治が絡んだりするものの、あえてその辺りは深く描写せず、国王とその周辺、そして自分自身の感情を延々と綴っていく潔さ。
人を選ぶ小説かも知れませんが、多分死ぬまで側にある一冊だと思っています。
表紙の端はすり切れ、ページは汚れてきてしまっていますが、これも本という物理的な媒体が刻んだ歴史の一つ。
電子の本も悪くないのですが、私は紙の本が好きです。
電子書籍は端末が壊れたら買い直すまで読めませんが、紙の本はページさえ無事なら、欠片さえそろっていれば、バラバラになっても直せる。紙はそんな持ちの良さが魅力です。
持ち物はなんでも耐久性重視。