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[序]マジカル大決戦-5

【エピローグ】
  世界は平穏を取り戻した。
  平和になったわけではない。大きな脅威が一つ減っただけ。それでも彼女たちが成し遂げたことは途方もなく大きい。

「お父さんとお母さんが、転校先を探してくれたの」はにかみながらアキは言った。「だから頑張って学校行こうと思う」
  アキは新しい一歩を踏み出そうとしていた。

「パパが珍しく僕に優しくしてくれてね。『男みたいならなくていいんだ』ってさ。正直、今更そんなこと言われても困っちゃうけどね」ココノは肩をすくめた。「ま、とりあえずはパパの希望通りスカートは履くことにするよ」
  ココノは変わろうとしていた。

「なんかよくわからねーけど、あたしイギリスに留学することになってさー。アンナの家にホームステイするんだよな。「こうかんりゅうがく」っていうらしいんだけど何であたしが」
「え、嫌なの? ハルカちゃん?」
「そんなわけあるか」
  なぜか二人は手を繋いだままだ。

「魔法少女にかまけていましたから、遅れを取り戻さなくては。エリートたる私がいつまでも学年二位の座に甘んじているわけにはまいりませんわ」 
  バーバラは私立中学へ行き、そこからもっと上を目指していくらしい。
「魔法少女は未来まで保証してはくれませんもの」
  バーバラは現実的だ。 
  
  数日が経ち、それぞれの日常へと戻っていく。 
「戦いが終わったらみんな離ればなれなんだね」
「そうやなあ。魔法少女と言ってもそれが仕事やないし、みんなは未来へ進む権利っちゅうもんがある。カレンだって魔法少女を辞めて自分の道を進む。それでええんや」
  ケロちゃんの言葉にカレンは首をふる。 
「私、魔法少女を続けようと思うんだ」
  カレンは真剣な眼差しでパートナーを見た。 
「きっとまだ何かできることがあると思うの」
  あの瞬間、女王は笑っていた。それは安堵さえ思わせる穏やかな笑みだった。 
  正しかったどうかなんて判らない。それでも彼女は勝った。 
「女王は封印したけど、邪悪な魔法使いってまだまだたくさんいるってケロちゃん言っていたじゃない。私、みんなをそういう人から守りたいの」
「ええんか、カレン? お前だけが犠牲になることはないんや。お前はようやったんやで」
「判ってる。でもね、いろんな事考えたら、やっぱり自分がやりたい事ってこういう事なんじゃないかな、と思って」
  カレンは女王から何か大きな物を託された気がしたのだ。 
「だから続ける」
「お前はこうと決めたら絶対動かん子やからなあ。ええで、ワイも付き合うたる」
「きっとそう言ってくれると思ってた。これからもよろしくね、ケロちゃん」
  
  
  かつて。 
  正義と愛を信じ、戦った魔法少女達がいた。 
  信じる心を魔法に変えて、世界を救った少女達がいた。 
  
  挫けぬ勇気を胸に秘め、今日も元・魔法少女は空を翔る。